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軽度発達障がい児の学習の遅れのメカニズム

土台の弱さ
原始反射の残存 → 視覚と運動の統合が不十分
  ↓
自分の体を自分でうまく → 体のバランスの悪さ コントロールできない
  ↓
感覚統合の悪さ →  こだわり・転導性
  ↓
環境に関して適切な情報が得られない
  ↓
概念形成・論理性の弱さ → レディネスの弱さ
  ↓
国語・算数等の教科学習のつまずき

 私が軽度発達障がい児と関わるようになったきっかけは、以前肢体不自由児施設 旭川療育園において、脳性麻痺児に約10年間、ボイタ法、ボバース法、ドーマン法をもちいて原始反射の抑制や脳の活性化を促進させたり、感覚統合訓練やPT、OTの手法を用いて運動機能の発達を伸ばすべく機能訓練士として働いていたことにあります。

 旭川療育園退職後、約35年間軽度発達障がい児の指導・教育に携わって現在に至っていますが、軽度発達障がい児の指導、教育には旭川療育園時代の脳性麻痺児の機能回復訓練が大いに役立ちました。

 私の軽度発達障がい児の指導・教育方針は、小学校入学後、国語、算数などの教科学習につまずかせないこと、学校生活をスムーズに送らせることにあります。

 対象年齢は3才から小学6年生までであり、彼らに対して0歳児から小学校6年生までのピアジェの発達段階を参考にして、彼らの発達の遅れを伸ばすべく、神経行動学、発達心理学、保育、医学、教育の各分野にわたり研究、実践してき ました。

 軽度発達障がい児の教育にはエバーソールやケファートは、視覚的、聴覚的並びに触覚的方法をもちいることが適切であるといっています。

 しかし、私はこれらの方法をもちいて教育の効果を高めるためには、それだけではまだ不十分な部分があると考えています。

 これらの方法だけでは、まだ基本的な解決に至っていないため、まだまだ解決しなければならない課題が多いと思います。

 それが、これらの視覚・聴覚・触覚よりも低位である原始反射の抑制、身体のバランスの悪さの改善、こだわり・転導性の抑制、感覚統合の悪さの改善です。

 私はこれらを「土台の弱さ」と呼んでいます。この土台の弱さは軽度発達障がい児にとっては特有の特徴としてみられるものです。

 原始反射がごくわずかに残っているのが軽度発達障がい児であり、多く残しているのが脳性麻痺児といえます。軽度発達障がい児は原始反射がごくわずか残っているために、人間本来のよい反射の出現が遅れているのです。

 それにより、軽度発達障 がい児は脳性麻痺児ほどでないにしても、ごくわずかな異常姿勢と何らかの異常運動パターンを抱えています。

 それが、日常生活を送るにあたり、視覚ー運動の統合が不十分であったり身体のバランスの悪さにつながっています。

 モリソンは、相互に関連した三つの発達上の問題として、「神経行動学的機能 不全」という言葉を使ってつぎのように指摘しています。

 1.多くの原始反射、特に緊張性頚反射が十分に抑制されていない
 2.姿勢、平衡感覚が不十分で、子どもの重力に関する調節が自動的になっていない
 3.運動中の眼球・運動抑制や視知覚が不安定で視覚ー運動の統合が不十分である
   (『感覚運動の発達と学習障がい』p12学苑社)

 異常姿勢の中でも、緊張性頚反射についてモリソンは

 「緊張性頚反射は、赤ん坊にとって適応的な価値をもっています。
 例えばそれは食べ物を食べる時に赤ん坊の頭を自動的に調節したり、うつ伏せの時の赤ん坊が窒息しないようにする役割を持っています。
 しかし、この反射は一方で随意的な協応運動や視覚-運動系統合の発達に悪い影響をもっています。」(『感覚運動の発達と学習障がい』 p61)

 緊張性頚反射(非対称性のものと対称性のものに分けられる)は、高次の中枢神経によって抑制されるはずのものです。緊張性頚反射は頚部との関係における頭部の位置により起こる四肢の緊張の変化から成り立っています。

 例えば、頭部が右に回ると、左の上肢は屈曲し右の上肢は伸展します。(非対称性頚反射)この反射は延髄レベルで統合されており、やがて人間本来のよい反射である各種の立ち直り反射によって取って代わられます。

 これらの緊張性頚反射がある一定年齢になっても抑制されないと、人間にとってあるべき姿である、立つ、歩く、動く等の大切な反射である各種立ち直り反射が遅れることとなり、姿勢や運動又は身体バランスの悪い影響が見られることになります。

 エアーズは、「勉強やそれ以外の学習全ては、確かに大脳皮質の部位に関係していますが、学習が正常に機能するためには、これらの部位が相互依存関係にあるというだけではなく、低次の神経機構も非常に重要な役割を果たしています。

 このようなわけで、活動のためのプログラムは、第一に、脳機能、特により古く低次の部位の機能に重点を置かなければなりません」(『感覚運動の発達と障がい』p35)と言っています。低次の神経機構とは、NPO法人遊育・遊びを育てる会が実践している土台の部分にあたります。

 これらの土台の弱さを改善するためにNPO法人遊育・遊びを育てる会では、ダイナミック遊びの手法を取り入れて土台作りをしています。

 ダイナミック遊びとは、エバーソールやケファートが唱える学習の発達段階の階層(『ガイドブック学習障がい児の教育』ナカニシヤ出版p80)の最下層に位置する粗大運動と同じ意味でありダイナミック遊び=粗大運動遊びとも言えます。

 遊びは、認知的、情緒的、社会的そして身体的というすべての面で子どもの成長にとって欠かせないものです。

 このように、遊びの利点については色々ありますが、NPO法人遊育・遊びを育てる会が目指している点は土台作りです。土台作りをすることにより、小学校の学校現場をスムーズに送らせることと同時に将来の就労をスムーズに進めさせることをも狙いとしています。

 土台作りで、効果が見られるものとして、つぎのようなものがあります。

 1.子どもは遊びを通して自分の外の世界(環境から得られるもの)を学習する。
   いわゆる自分の外の世界を理解すること。
 2.身体全体を思う存分に動かして遊ぶことにより彼の感覚(視覚・聴覚・触 覚・固有覚等)
   を鋭敏にすること。
 3.感覚を鋭敏にしながら、単独の感覚を使うことから、複数の感覚を使いこなすことに発展
   させること(感覚統合)。
 4.こだわり・転導性を抑制すること。
 5.身体のバランスの悪さを改善すること。

 NPO法人遊育・遊びを育てる会の特色は「土台作り」と「幼児期からの早期指 導・教育」にあります。この2つを組み合わせることでより効果が高まります。

 年齢が高くなればなるほど伸びにくくなります。3才からのなるべく早い段階での取り組みが必要です。

 NPO法人遊育・遊びを育てる会はダイナミック遊びによる土台作りと平行して群れ遊びにて人間関係の弱さ、ことばの遅れやコミュニケーション能力の弱さ、社会性の弱さなどの子どもの対策を行っています。

 幼児期でもなるべく早い段階 から指導教育することで国語・算数の学習の理解を進めさせることや学校生活がスムーズに送れるようにしています。

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